不登校を防ぐやさしい対応(HSC編)

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大人であれば、職場でうまくいかない場合は、辞めて仕事を替えることができますが、子どもの場合はどうでしょうか?現行の教育システムの中では、気に入った学校を選ぶことも自分に合った先生を選ぶこともできません。そして、興味のある分野をもっと掘り下げて学習したいという欲求を満たせる科目も準備されていません。選択肢がないというのが最も辛いところです。

日本の現状では、画一的な方法で教育が進められており、このやり方が適している子どももいれば、そうではない、適さない子どももいるのです。HSCの子どもたちの中には、特に持って生まれた特性のために、一斉学習を苦しく感じている子も存在します。ADHDのお子さんが教室にいる時には、気が散るので黒板の横には掲示物を貼らないようにしました。こうした「合理的配慮」がHSCの子どもたちにも必要ではないでしょうか。

HSCの子どもたちが学校生活で苦しく感じる場面とは?

HSCの子どもたちにとって学校はとてもストレスを抱えやすい場所です。HSCの子どもの気質と学校という体質が合わないということから、実際に学校を「地獄のように苦しい」と感じる場合もあります。

では、HSCの子どもたちがストレスを感じてしまう生活場面をいくつか挙げてみましょう。

 

①刺激を受け過ぎて圧倒されると、落ち着きがなくなる、話を聞けなくなる、物事がうまくできなくなるといった状態になりやすい。

②刺激を受け過ぎると疲れやすい。神経が高ぶり過ぎた時は、なかなか寝付けない。

③刺激が多すぎて不安を感じる状況や環境では、冷静さや自制心を失って、持っている本来の良さや力が発揮できなくなりやすい。

④人の集まる場所や騒がしいところが苦手。

⑤大勢の前で発表することや大勢の人と会話をすることが苦手。

⑥誰かの大声や誰かの怒鳴る声を耳にしたり、誰かが叱られたりしている場面を見ただけで、自分のことのように辛く感じる。

→感受性が高い。

⑦物事を始めたり、人の輪に加わったりする時に、行動を起こすのに時間がかかる。

→状況をじっくり観察し、だいじょうぶかどうか確認してからでないと心配。

⑧想定外のことや突発的な出来事に対してパニックになってしまう。

⑨嫌だと思っても、なかなか「NO!」と言えない。

→特に支配的な人に対しては言えなくなる。

⑩他人のネガティブな気持ちや感情に影響されやすい。他人の気分に影響されて、動揺したり悲しくなって元気がなくなったりする。

→自他を隔てる「境界」が薄い。

⑪安心できない人から、急に話しかけられる、頭をなでられる、体に触れられることなどを嫌う。

⑫子ども扱いする人や権力を振りかざす人がとても苦手。

⑬クラス替えで親友と違うクラスになり、すごく落ち込む。

→不安度が高まる。

⑭1対1で話をするのが好き。

→大勢が苦手。

⑮集団に合わせることよりも、自分のペースで思索・行動することを好む。

⑯観察される、評価される、急かされる、競争させられる、やりたくないことをやらされることなどをひどく嫌う。

⑰人と比較して自分が劣っていたり、うまくいかなかったりしたことで自信を失いがちになる。

⑱学校で受けたストレスに対する反応が、別の場所や状況でも繰り返される。例えば、「落ち着きがなくなる」「固まる」「泣きやすくなる」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「引きこもる」「便秘になる」「眠れない」「熱が出る」「吐きそうになる」「お腹が痛くなる」など。

⑲ちょっとしたことを気にする。

→学校での環境や人間関係から強いストレスを感じる。不適応を起こしやすくなる。

⑳人の些細な言葉や態度に傷つきやすい。

→小さな出来事でも「トラウマ」になりやすい。

 

以上のような傾向が10個以上みられる場合は、学校生活がかなり負担になっていると考えるべきでしょう。

学校へ行けなくなったHSCの子どもたちの心

「他の子に遅れをとったらいけない!」「少しでも社会性を身に付けさせないと!」「自立させなきゃ!」など、周囲の大人たちからの何気ない言葉かけに対し、HSCの子どもたちは、大人の期待にうまく応えられない自分を責めて、「自己否定」をしたり「劣等感」を強く持ったりします。そのことで、子どもたちの心や体によくない影響を与えてしまうことが起こりがちです。

HSCの子どもたちが、学校へ行けなくなってしまうのは、学校の環境や教育のシステムが、彼らの気質と合っていないことが原因の1つです。繊細で傷つきやすいHSCの子どもたちにとっては、ネガティブな感情を持たざるを得なかった小さな出来事の積み上げにより、更に深い心の傷を負うことになります。嫌だった感情を吐き出したり、誰かに受け止めてもらったりできなかった場合、解消されずに心の深いところに留まります。それは、「トラウマ」となって、持ち合わせた繊細な感受性のために、さらに些細なことにも過剰に反応するようになってしまい、傷つきを深めます。こうしてストレス耐性が下がり、トラウマを重ねていくという悪循環にはまってしまいます。

耐えきれないほどのストレスに晒され、物理的にもそこから逃げ出すことができなくなった場合、無意識のうちに防衛機制が働きます。それは、「解離」という状態です。意識が変容したり記憶が飛んだりします。結果として、「ぼーっとしている」「授業を受けているが、成績が振るわない」「忘れ物が増える」といった状態が表れます。

耐えきれないほどのストレスに晒され続けると、現実から意識を切り離して苦痛に耐えようとする無意識な心の防衛反応が表れるのです。心が壊れてしまわないように守っているのですね。

不登校を受け入れて、生きやすい道を探る

心に深い傷を負ったHSCの子どもたちは、学校を遠ざければ、心の修復はできるのでしょうか。

学校から離れて、そっとしておくだけでは、元気な心を取り戻すことはできません。なぜなら、解消しきれていないネガティブな感情を心の奥底に押し込めているままの状態だからです。

心の修復をするためには、「怒鳴る」「わめく」「泣き叫ぶ」などして、ネガティブな感情を吐き出して解消しなければなりません。そうしてその時の出来事や体験とその時に抱いた感情とをセットにして過去のものにしていく作業が必要なのです。そうすれば、辛かった出来事も、時間の経過と共に忘れていくことができるのです。

HSCの子どもたちの中には、心の修復が十分にできないまま、成長していく場合もあります。自分のことを心配してくれる親を気遣って、「良い子」として振る舞おうとする子もいます。

トラウマを抱えたHSCの子どもたちの多くが、ネガティブな感情を出すことなく「良い子」として生きる習慣を身に付けてしまっています。思春期・青年期を経過し、大人になってから、対人関係の問題や挫折にぶつかった時、小さい頃に受けたトラウマのせいで、不安障害やうつ、摂食障害、依存症などに発展するケースも多くみられるため注意が必要です。大人になってからでは、修復が困難なことも起きてきますので、子どもの気持ちに寄り添う対応が大事だと思います。


学校で友達とうまくやっていけないお子さんや

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